これもおなじみ、お題を頂いて即興で小噺を作るおあそびです。
「芝浜」「酔っ払い」「財布」のような三題噺も良いかも。 |
「ちょいと、若旦那、浮かない顔してどこへ行くんです?」 「ええ、品川用水まで」 「いつも様子いい若旦那が用水に何の用す?」 「なんだか洒落だね。実は品川に起請文を取りかわした馴染みがいるんです。 その馴染みが移り代えに五十両いるってんですけど、親父に言ったら怒鳴られまして、 馴染みに話したら、『移り代えもできねえような板頭ならいっそ死んじまったほうがいい。』なんていってね。挙句の果てには、一緒に心中してくれってんですよ。」 「なんだか、どっかで聞いたことのある話だな。」 「そいで品川用水に二人そろって飛び込もうってことになってね。 泳げないから嫌だっていったんですけどね。馴染みがどうしてもっていうもんですから。 こうして品川用水まで。」 「ところで、品川なら海が近いのにわざわざ品川用水に行くわけはあるんですかい。」 「馴染みのいうには水着をもっていないからだって。」
「ああ、『夢の中へ』ね。」「そりゃ陽水。」 「じゃあ、胎児の浮かぶ。」「そりゃ羊水。」 「水をくみ上げ。」「そりゃ揚水。お前無理問答の丸ちゃんのお題でも解いて来い。」 |
女1「彼のことを考えるだけで、毎日がバラ色に輝くの。」 女2「私もそんな恋がしてみたいは。ああ、恋、恋、私の恋はどこ。」 男1「親分、道に迷ったみたいですね。花札賭博の場所はどこですかね。」 男2「おめえ、なんか臭うぞ。最近、風呂に入ってねぇだろ。」 男1「最近と言わず、去年の大晦日からずっ〜とご無沙汰でして。」 男2「汚ねぇやつだ。ちょっと待て、耳を澄ましてみろ。聞えたか。」 女2「恋、恋、恋、恋・・・・」 男1「ここの二階から聞えてきますぜ。女博徒だ。」 男2「合図は、戸口を三回叩くんだ。叩いてみろ。」 ドン、ドン、ドン 女1「あら、いま時分誰かしら。あんたが呼ぶから本当にやって来たんじゃないの。」 女2「私、見てくるは。」 女1「私も一緒に」 女2「どちらさまですか。」 男2「いいか、合言葉を言うんだ。」 男1「こいこい」 女1「本当に私の願いが通じたんだわ。今、あけます。」 ガラッリ 女2「何、このおじさん、恋(鯉)どころか鯰ヒゲの、何この臭い、ひどい臭いね。こんなの恋と関係ない。」 女1「そうかしら、恋は曲者(クセモノ)って言うじゃない。」 |
『浅野様、ご登城、ご苦労様でございます。さて、早速ながら、柳の間へ通じる廊下は通行料が必要となっております。廊下は松、竹、梅の三つからお選びください。』 『なんと、して、その三つとは!?』 『まず、梅の廊下は一両の通行料になっております。ただし、迷路になっておりまして、うまくいけば5分後には柳の間へ出れるかと存じます。』 『うまくいかないとどうなるのだ。』 『先月ご通行された亀井 茲親様はいまだ柳の間にお出ましになっておりません。』 『して、次は!?』 『次に竹の廊下の通行料は五両となっております。こちらは道なりに、失礼、廊下なりに歩いていけば、二日後には必ずやたどり着くことができます。途中宿屋もご用意できておりますのでご安心ください。』 『拙者は明日には国許に出立せねばならぬ。して、松の廊下は!?』 『松の廊下は歩いて3分でつきます。』 『さぞ、通行料は高いのだろうな?』 『いえ、一分でございます。』 『じゃあ、松の廊下にする。早く通せ。』 『ただし、途中で難癖いじめっ子の吉良殿が待ち伏せて居ります。泣いて戻ってきた大名は数知れません。』 『用心して通ることにしよう。して、どこらあたりに待ち伏せて居るのか。』 『柳の間に通じる階段の三段目です。』
「浅野さんは少しボケてたんですかねえ」 「待つの老化ですか・・・。」
与太郎 「こんな所に信号が これじゃ 待つの廊下だ」
「浅野君ちょっと来たまえ」 「ハイ、吉良部長お呼びでしょうか」 「君、昨日の不始末の責任はどう取るつもりかね」 「昨日の・・・て、ああ接待のあれですか」 「あれじゃないだろ、宴席を盛り上げようとして準備に時間がかかったのは分かる。しかしいくらなんでもあんなに長いことお得意先を廊下で待たせるこた無いだろう」 「はあー」 「はあーじゃない。御蔭でお客様からさんざん皮肉をいわれちまったじゃないか」 「なんてです」 「吉良部長と浅野課長だけに、これが本当の<待つの廊下>だね。だって」 「上手いこと言いますねあのお得意さん」 「アホ。もう社長の耳に入っていて社長はカンカンだ。君は切腹もんだそうだ」 「へっ、それじゃあ首ですか?そんな殺生な。餓鬼は小さいし、家のローンも沢山残っているし。吉良部長。一生のお願いです。何とか社長に取り成していただけませんでしょうか。どうかお情けを」 「全くお前ってやつは。しょうが無い。浅野。どうやら今度は俺から貴様に人情(刃傷)をかける番のようだ」
「おとっつぁん、松の廊下って何。」 「おう、そりゃおめぇ赤穂浪士の話に出てくる廊下のことだよ。」 「ふーん、で、そこで何があったの。」 「そこで浅野なんたらかんたらが吉良なんたらかんたらに切りかかったそうだぜ。まったく物騒な話よ。」 「ふーん、で、何で松の廊下って言うの。」 「俺が俺の親父、つまりお前のじいちゃんから聞いたところによるとな、浅野なんとかが「吉良、覚悟。」と、こうワーってな感じで切りかかったのよ。しかし敵もさるものよ、吉良なんとかは「なんの。」ってなもんで真剣白刃取りをしたわけだ。で、刀を取られた浅野なんとかはたまったもんじゃないと、こうワーっと逃げ出したわけだ。当然吉良なんとかは追いかけるわな。「待つんじゃ、浅野。待つんじゃ、浅野。待つんじゃー。」というわけで待つの廊下って言われる様になったそうだ。分かったか。」 「うん、オラが馬鹿なのは遺伝だって分かったよ。」 |
「あのあばた面の女のどこがいいのかねぇ。」 「あばたもえくぼっていうじゃないか。」 「おまけに、相当貢いでいるって話だ。あいての本性が見えてないんじゃないか。」 「ラブイズブラインドだね。」 「なるほど、ブラインドだけに、巻き上げられるか。」
「エイリアンみたいな姿でも、見慣れるとかわいいよね?」 「アバターもえくぼっていうからな。」 |
「えらい血相変えてどないした。」 「へえ。えらいこって、あの関取の玉二つなあ。」 「おお。この前巡業から帰ってきたそうやが、どないしたんじゃ。」 「それがちゃんこ鍋の河豚食いよってあたって死んでしまいしましてな。」 「ええっ。そらほんまか。」 「へえ。河豚食うてふぐに死んで死んでしまいました。」 「これ。そんなとこでしょうもない俄いうんやないがな。」 「わたいもあいつにはいろいろ贔屓した手前、放っとかれへん。せめて葬礼でもせなあかんと思い、上町のおやっさんとこへ羽織借りに行こうと思てたとこなんです。」 「そら大変やな。・・・うん?おい。むこから来んの、あら玉二つちゃうか。」 「ええ。あっ。ホンマや。おおい。関取。」 「いやあ。これはこれは、えらい迷惑かけましてもうしわけごわせん。」 「あんさん。大丈夫やったんかいな。えらい心配しててんでえ。」 「これはありがとうごんす。河豚食うてころっといくとこやったんが、たまたま居合わせたのが、赤壁周庵さんいうて、オランダの医術にくわしい御方でしてな。キュウレンスちゅう稀代の妙薬を下された。それで命が助かりましたわい。」 「何や。けったいな薬やなあ。」 「飲んだら、腹の中で腸がカンカンノウ踊りよって、毒をだしよったんで。」 「それで名前がキュウレンスかいな。」 「他には、カッポーレやステテーコなんかの薬も持っていましたわい。」 「よっぽど、踊りの好きな先生やな。・・・でもなおってよかったで。」 「ハイ。親方もえらい喜びよう。暫く休んで、出稽古で力つけ、て言うてくれました。」 「でも、関取。もう河豚はあかんで。」 「そうでごんすな。これからは河豚の替わりに何食べたらいいじゃろうかいのう。」 「そら。泥鰌やな。」 「どうしてでごんす。」 「すもうには泥鰌〈土俵)がつきもんやで。」
葬式 ある、無筆の旅人がある村の家の前を通りかかりました。 「はて、看板に何か書いてあるが、読めない。中に入って聞くか。…すみません。ここは何でしょう。」 「へえ、今日は葬式をやっています。」 「ええ、葬式。しまった、葬式では出づらい。」 「あの、父とはどういう関わりで?」 「ああ、息子さんですか。ええと、そのう。(小声で)遠い遠い縁なら怪しまれることはないだろう。(普通の声で)ええ、私は亡くなったお父さんの子供のときからの友達の、子供の友達の親が勤めている茶屋の常連さんの薬屋の隣に住んでいる、男を殴った武士のお供に石をぶつけた子供の親と、仲のいい男と一緒に将棋を打つ神社の神主さんと碁を打つお寺の和尚さんと仲のいい男の作った畳を、盗んだ泥棒の子分に下駄を盗まれた医者にかかっている男にさっきぶつかった九兵衛です。」 「へえ、父の子供のときからの友達の、子供の友達の親が勤めている茶屋の常連さんの薬屋の隣に住んでいる、男を殴った武士のお供に石をぶつけた子供の親と、仲のいい男と一緒に将棋を打つ神社の神主さんと碁を打つお寺の和尚さんと仲のいい男の作った畳を、盗んだ泥棒の子分に下駄を盗まれた医者にかかっている男にさっきぶつかっただけの縁なのにご苦労でございます。」 「では、御仏前に。…ええと、これか。賽銭を入れよう。この箱だな。あれ、人が寝てるよ。じゃまっけだなあ。おい!起きろ!(顔をたたく)うわ!えらく冷たいね。冷え性なんだな。それにしても体が固い。さてと、やっとどけられた。賽銭入れて。成仏してください。」 「あ、ありがとうございました。」 「ええ、しかし、箱の中で寝てる人がいましてね。どかしておきましたから。」 「あの、図々しいようですが、香典は…。」 「香典?ああ、この辺の方言か。賽銭のことだな。ええ、あっちに入れておきました。」 「ありがとうございます。」 「それでは。」 「ふう、遠い縁なのに来てくれて嬉しいや。寝てる人がいるといっていたな。…うわ!親父が棺おけから出てきてる!生きてたのか!」 |