これもおなじみ、お題を頂いて即興で小噺を作るおあそびです。
「芝浜」「酔っ払い」「財布」のような三題噺も良いかも。 |
「おや 哲さん どうしたんだい?うかない顔して」 「あ、旦那、実はそこで落として 買ったばかりの卵 裂けちゃったんです(卵酒)」 「あまり卵が裂けるとは言わんが、で、割れたのを交換してきたんだな」 「ええ、今度は気をつけねえと。この路地狭いんで どいてください」 「なに?どく?けしからん(毒消し)この私にむかって」 「・・・・・・」 「どうした 哲 ポーッとして(鉄砲)」 「いや この話、落ちが無いと思って」 「当たり前だ。おまえが しっかり卵を抱えているから 落としようがない」
熊さん 「この間 体の具合が悪くなっちまって」 八っあん 「で どうしたい」 熊さん 「卵酒を飲んだと思ったら毒消しだったんで」 八っあん 「おいおい そんな無鉄砲をするんじゃねえ」
「最近、風邪気味でねえ、調子がでねえんですよ。そこへとらふぐのでっかいのを釣上げたんですよ。精をつけるにゃもってこいですから、こいつを食ってやろうと思うんですよ。普通に食っちゃ面白くねえ。ちょいと、通を気取って肝を食ってやろうかと思いましてね。これがほんとの肝だめしなんちゃってね。」 「馬鹿あ言っちゃいけねえ。毒にあたたったらどうするんだい。」 「なにね。越後の毒消しをまるごと一袋飲んでから、いただきますから大丈夫でさぁ。」 「越後の毒消しといやぁ名薬には違いないが、あれは便秘の薬だ。なに了見違いしてるんだ。」 「そいじゃ、熱を加えて肝のふぐ鍋にしていただくことにするんじゃどうですか。」 「おまえさんは、破れた金魚すくいだね。」 「なんですって。」 「救いようがないねえっていってるんだ。ふぐの毒は煮たってなくなるもんじゃないんだ。 素人の調理ぐらい危ないものはないんだ。ふぐの毒にあたったら大変だよ。 ふぐちり鍋をてっちり、ふぐ刺しをてっさと言うのをしってるかい。てっちりは鉄砲の鍋、てっさは鉄砲の刺身てことだ。鉄砲はあたると死ぬ、ふぐもあたると死ぬ、そこからこんな呼び名が生まれたんだな。こんな言い方をよしとしないふぐの料理店もあるんだ。店にとっちゃ縁起でもねぇ呼びかただからね。そういった店では代わりにふく(福)と呼ぶぐらいなんだよ。てめえのような不心得者がいるから、いつまで経っても中毒をおこして死んじまう野郎が絶えねえんだあ。てめえみていな奴のことを無鉄砲者というだよ。精を出したけりゃ、卵酒がいちばんだ。卵酒でも飲んで寝ちまいな。」 落ちがないじゃないかって、ハイ、卵酒だけに、おも白みがありません。
上のお題は、三遊亭円朝師が名作「鰍沢」を著したときのお題だったそうで。無謀とか、身の程知らずとか仰るかも知りませんが、ま、名人と素人の違いを改めて認識して頂ければ、結構でございます。 「大家さん、大変だ、大変だ! 泥棒に入られた!」 「そりゃあいけねぇな。詳しく話しておくれ」 「今日は今年の仕事納めなんで遅くなる、そう光のやろうに言い残して、仕事に出たんですがね、昼の食い合わせが悪かったのか、夕刻、腹が痛くなってきたんです。で、こりゃあ、仕事が年を越す事になっても、家ぃ帰って正露丸の毒消しでも飲んで休んだ方が良かろうって、予定より早く家ぃ、帰ったんで…… そうしたら、いやがるじゃねぇか、見ず知らずの野郎が」 「そりゃあ物騒だねぇ。まだのこのこしてやがったのかい?」 「のこのこも何にも、風邪でも引きやがったと見えて、勝手に卵酒作って飲んで、布団の中で青い顔してやがった」 「??? 呑気な泥棒だねぇ…… で、お光っつあんは大丈夫だったかい?」 「いや、光の奴ぁ、身ぐるみ剥がされたと見えて、素っ裸で泥棒と一緒に布団の中にいた」 「オイ、オイ、しっかりしなよ! そりゃ、泥棒じゃなかろう」 「ヘェッ!」 「お前さんにゃかわいそうだが、そりゃ間男だろう」 「えっ、まさか!」 「わかりそうなもんじゃねぇか、どうして泥棒と思ったんだい? 鉄砲でも持ってたのか?」 「鉄砲って何ですかい?」 「アレ、鉄砲知らないかねぇ? 筒になってて、弾が出るんだよ」 「筒になってて、玉が二つ付いたやつを股間からぶら下げてやした」 「何、言ってんだい! 結局、何も盗られやしなかったんだろう?」 「いいえ、盗られやした」 「何を?」 「女房を寝取られやした」 |
八っあん 「うるさいなあ 大きい小枝」
熊 「今の話き小枝かい?」
【8】の続きで・・・ 「身内で誉めても洒落にならねぇよ」 「年末だし、お歳暮代りにあんたも誉めなさいよ」 「奮発して、肥溜めに鶴ってのはどうだい」 「それじゃあんまり臭すぎよ、もっと目出度いのやって」 ♪「おめでたいやつ 世間のうわさ 池の鯉だよ ぼけて見え」♪♪ (師匠こんなに誉めたんだから、お年玉お願いね)
「小枝師匠って素敵ね」 「え〜っ???師匠のどこが素敵なの?」 「そりゃ勿論、声だけよ!!!」
「小枝師匠は優しいですか?」 「怖えだ!」 |
熊さん 「よっ 八つあん 様子がいいね」 八っあん 「おお 熊さんか この服 囲(格好)いいだろ」
通りかかった家で飼われている犬が、必死になって囲いの中から身を乗り出して ある方向を見ていました。 「ご主人でも、帰ってくるのかい?」っとたずねると、 「ドッグフード買いに行くぐらいで、どこまで行ったんや、、」
「囲いが出来たのか」 「もうええ、もう」
「ださい囲いだな。」 「そうか?」 「ええ。『囲い』と書いて『ださい』って読ませようとしているんですかね。この調子だと家の方もさぞかし『囲い』んでしょうね。ところで師匠のお家は?」 「この『囲い』家だよ。」 「かっこいい。」
「おい」 「はい」 「向こうに囲いがあるやろ」 「えっ、何処です」 「ほら、あそこやがな」 「え、何処、何処」 「ほら、あれや」 「あー、あれね、囲いですね、それが」 「いやーあの囲いな、囲いはあんねんけど、家があれへんねん」 「家が無い」 「そやねん、まあ、家があったら、囲いも囲いとしての役割を果たすねんけどな、家がなかったら囲いとしての役割は果たしてないわな、そこでや、あの囲いの中をお前に調べてもらいたいねん」 「はい、あの囲いの中をですか」 「そや、只とは言わん、それなりの報酬は渡そう」 「本間ですか、よし、それなら、行ってきますわ」 ということで、この男調べにいったんでございます、暫くして帰ってまいりまして 「だんさん、調べてきました」 「おー、調べてきたか、どうなっとた」 「はい、その中には犬がいまして」 「ほう、犬がおって」 「はい、その犬に私も囲まれました」
「空き地に囲いができたってね」 「囲い者の家が建つんだってさ」 |
熊さん 「これ 値札がねえぞ」 魚八 「ま さかな」
野菜と魚両方売っている魚屋がありました。 魚「魚屋ぁ。魚屋ぁ、今日は大根が安いよ!」 客「ちょっと、魚屋が大根が安いってのは変だと思うよ。」 魚「そうだね。ええ、八百屋ぁ、八百屋ぁ、今日は大根が安いよ。」 客「おいおい、いつからここは八百屋になったんだ。まあ味がいいから八百屋でもいいけどさ。」 魚「何を言う。アジは魚だ。」
魚 屋「さかな、さかな、さかな、さかなを食べると♪」 八百屋「きのこの子ったらきのこ♪」 団子屋「だんご三兄弟チャンチャン♪」 魚 屋「うるせえってんだ。この八百団子!」 八百屋「おいおい、一緒くたに呼ぶこたあねえだろうが。」 魚 屋「うるせい、このトウヘンボクども。せっかく客寄せの美声を響かせてるのに、てめえたちの音痴な声でおいらの歌も生きのいい魚も腐っちまうぜ。営業妨害だ。」 団子屋「なんだと。おんなじ店子同士だ。てめえ勝手なこと言うなよ。」 八百屋「そうだ、そうだ。」 魚 屋「こっちとら、魚屋だい。おれにサカナウナ(さからうな)。」 大 家「なんだいなんだい、おまえたち、なにを喧嘩してるんだい。・・・ふむふむそうか。魚屋さんが悪いな。」 魚 屋「べらぼうめ。大家の出る幕じゃねえんだ。」 大 家「魚屋さん、そんな口サカナ(さがな)いこと言っちゃだめだよ。あんまり、聞き分けのないこと言うとトット(とっと)と出ってて貰うからね。」 大家の小言が効いたとみえて、魚屋はすぐにシュン(旬)となりました。
「この魚、ハウマッチ?」 「ヘイ、言い値にまけときマス」
客「おおい、あの魚をくれ!」 魚「なんだいその”あの魚”ってのは。」 客「へい、縁起の悪い魚で・・・」 魚「どうして、縁起が悪いんだい。」 客「それは、”死にたい”だから。」 魚「ああ鯛か。」 |
熊さん 「おいらもう死にてえヨ」 こ隠居さん 「おお 熊さん いったいどうしたい」 熊さん 「仕事でしくじりをやらかしちまった」 こ隠居さん 「そんな事で死ぬなんて 死んで花見が咲くものか」
熊 「花見に行ってきたよ」 八 「へえ どこへだい」 熊 「荒川の土手さ」 八 「どて!!」
「花見に行こう。」 「花見に誘ってくれるのは嬉しいが、もう、お前なんかとは行きたくない。」 「どうして?」 「忘れたのか?去年はゴミ捨て場の近くの桜で花見をしたものだから臭かった。」 「その前は、崖っぷちの近くだったから落ちそうで怖かったね。」 「もう一年前は墓場の近くでさ。昼間とはいえ怖かった。」 「さらに、もう一年前は、殿様が隣にいてなあ、怖くて騒げなかった。」 「その前は、突風があってな。花びらが全部散っちゃった。そのあと、酔っ払った人が『枯れ木に花を裂かせましょう。』だなんて言って、灰をまきやがったな。」 「そうそう、だからお前とは行きたくない。」 「いや、今年はいいところだぞ。俺たちだけの独り占めだ。」 「本当かい?いや、どうせ、一本だけポツンとはえてるものなんだろう。」 「いやいや、30本は生えている。」 「本当かなあ。で、どこだ?」 「うん、虎焼寺だ。」 「おいおい、そこは梅じゃないか。」 「梅でもいいじゃないか。」 「良くないよ。桜を見なきゃ。」 「それじゃあ、駿河湾にでも行けば。」 「駿河湾は松だろ?」 「桜海老があるだろう。」 |