これもおなじみ、お題を頂いて即興で小噺を作るおあそびです。
「芝浜」「酔っ払い」「財布」のような三題噺も良いかも。 |
親分「やい子分たち!今日から俺は、改名するぞ。」 子分「なんて名前にするんですか。」 親分「捕前羅令流門(つかまえられるもん)から逃羅令流門(にげられるもん)に変える。前まで時々つかまってたがそれは名前のせいだ。名前を変えて逃げられるようにする。」 その夜、 親分「コノ家に忍び込もう…あれ、金目のものがない。ははあ、家の主人が持っているな。…おい、そこの男、金目のものを出せ! 主人「ひっひい。逃げろ!」 親分「逃がすか!…早いな。逃げられた!ははあ、名前を変えたからだな。」 |
お話の筋から落としどころへつなげていってオチを楽しむ落語という 大変知的なお遊び文化よりも、インスタントでストレートに 面白い話をバンバンできる芸人さんのウケる時代になりまして 寄席も生き抜くのにたいへんです。 古い時代のオチが理解出来ないお若い方に、いかに通用するオチを見つけるかで 落語家たちは必死でございます。 オチがさがせなくなった落語家はそれでオチマイ、ってわけ。 こういうせせこましい時代にはご隠居の出番はありません。 なにしろお年を召した方は、シルバー人材なんとかでまだまだ働こうという 世の中ですから、悠長にかまえているわけにはまいらないんですなあ。 「ご隠居ーオ」なんて呼ばれようものなら、盗みでもやって食ってる んじゃねえか、なんて、人から疑りの目で見られちゃったりして。 何しろ結婚なさった半数のカップルが分かれちゃう時代です。 縁結びに立ち会った神様が今、神様の中では一番羽振りのわるい 神様でらっしゃいますよ。神様仲間の中では一番小さくなってらっしゃいます。 逆に羽振りの良いのはインターネットの神様でしょうなあ。 インターネットの神様のインターのミコトと縁結の神様の縁結びのミコトの会話です。 「縁結びのミコトさんよう。今度はあそこのカップルが別れちゃったねえ。 あなた、あの二人を結んだんじゃなかったの?」 「ええ。結んだことは結んだんですが、いまどきの若者はカミをなんとも思ってないんで。」 「そうだよねえなんとかならないかねえ」 「無理でしょう、ネット社会ですから。」 「ネットはそんなにいけませんか」 「ネットは "スレ違い" を流行らせます。」 |
漁師の伯良が松原の海辺を通りかかりますと、一糸まとわぬ姿で水浴びしている女が居るではありませんか。背中をこちらに向けて、顔は肩越しにあごを載せるようにして横顔を覗かせていました。長い緑の黒髪に、うなじから脚まで透きとおるような白い肌の容姿で、年のころは十七八といった、ふるいつきたくなるようない〜いおんなです。 伯良は「こいつは噂に聞く天女にちがいねぇ」と思い、松の枝に羽衣を捜しました。その透きとおるようでいて艶のある白い衣は、松の枝で軽やかに風にそよいでいました。 伯良は、羽衣をつかんで天女に叫びました。 「おい、羽衣はいただいた。おいらと夫婦になってくれ。一生大事にするから。」 意外にも天女は恥じらいもせずに、伯良に向き直ってニッコリと笑いました。 伯良は天女の美しい顔とかたちのいいオッパイに目が釘付けになってしまいました。 「そう、じゃあ500万ほど頂戴。そうしたらこのおチンチン取って結婚してあげるから。」 伯良は唖然として天女の股間を凝視しました。そして、手に持っている羽衣が絹の下帯であることにやっとのことで気がついたのでした。
漁師の喜い公が海辺の松原できれいな衣を見つけました。 「こらええわ。家の宝にしたろ。」と持って帰りろうとしますと。 「もうし、御待ちなされてくださりませ。」 振り帰りますと、これがもうし、あんた 美しい天女やおまへんか。喜イ公驚きよってな。 「な、なんじゃお前天女か。」 「左様でござります。あなた様が持ってはります。その衣、なくては天に帰ることが出来ませぬ。何卒、お返し下さりませ。」 「いや。こら返せん。なあ、いまここで返したら踊りながら天に上るのやろがな。どっこい、そうはいくかい。これ、天女さん、物は相談やけどなあ。返して欲しかったらおんなじ衣を作ってはくれんやろか。そしたらわし一枚を返したるよって、残った一枚で見世物にして儲けたるのや。どやろ。できんのものか。」 「へえ。そんなことでよろしいのンですか。それならば分けない事でおます。ちょっと待っておくんはなれ。」 と、天女めが懐から矢立と懐紙取りだしよって、何やらさらさらと認めますと、空向かってその懐紙を放りよった。暫くすると空から紙包みが落ってきましてな。 「そしたらそれを受けとっておくれやす。」と天女が渡す紙包みを喜イ公受け取って。 「エライ.速いなあ。もう来たんかいなあ。どれどれ・・・あっホンマに羽衣はいったある。」 「それでよろしおますやろ。」 「よっしゃ。約束や。ホナ、あんたの返すから。気イつけて帰りや。それにしてもすぐ来るとはなあ。」 「そら、これは私らの制服です。」 「あ、なるほどなあ。そやけどええ反物つこてるなあ。・・・これ上物の絹やでえ。こんなんなかなか呉れんやろ。」 「そんなことおまへんえ。3年ごとに呉れますの。」 「へえっ!!天上もなかなか豪勢やなあ。どこかの役所が3年ごとに背広呉れるンと一緒やがな。おや。衣になんか書いたあるぞ。」 良く見ますと裏側に 「大阪市役所」 |
「おら、も一人こどもっ子さほしいだよ」 「うんにゃ、だめだ、こどもっ子は米さ喰う、そんだことでは長者さなれねえ」 「そんだっだら、皆で麦さ喰えばよかんべ」 「うんにゃ、そんでもだめだ」 「じゃ、わらでも喰えばええと言うだか」 土間でこの話を聞いてたこどもっ子、あわさ喰ってたとな。
お客「見せてもらいます。」 主人「・・・・」 お客「そこのお人、おもての茶碗見せてくれへんか。」 主人「・・・・」 番頭「いらっしゃいませ。すいません。ちょっと奥に入っていましたので失礼しました。」 お客「そこのお人はうんともすんとも言わないし、ビクとも動きませんけど、よく出来た置物ですか。」 番頭「いえいえ、当店の主人です。」 お客「耳でも遠いんでっか。」 番頭「いえいえ至って元気です。どこも悪いところはありません。すいませんけど、主人の目をよく見てなんか喋ってみてくれませんか。」 お客「そうでっか。ご主人!元気か?」 (お客が主人の目をよく見ると、主人は何度かマバタキをした。) 番頭「いま、主人は『おかげさんで元気です。いらっしゃいませ。』って言っています。」 お客「何にも聞こえへんかったけどなあ。」 番頭「マバタキを見てくれましたか。あれ、モールス信号です。」 お客「マバタキで話すんか。手話ならぬ目話やな。ご主人は口が不自由なんか?」 番頭「違います。ちょっとこっちの方へ来てください。」(といってお客を主人より遠ざけておもての方へ連れて行った。) 番頭「さっきも言いましたように至って元気です。主人は極端なしわい屋なのです。動くとお腹が空くようになって不経済だから、動かないようにしてるんですよ。口を動かすのも不経済だ言って食べ物も流動食、果ては喋るのも不経済だって言ってマバタキで喋るのです。」 お客「あきれたもんやな。ところでここに飾ったる茶碗見せてくれませんか。」 番頭「はい、これは昨日入ったばかりの逸品です。」 お客「なかなかのもんやな。なんぼするねん。」 番頭「十両です。」 お客「高い!まからんか。」 番頭「ちょっと待ってください。今主人に聴いてみます。」 番頭「旦那さん、お客さんがこの品、勉強してほしいとおっしゃっていますけど、如何ほどにしたら善いですか。」 (ちょうどその時、二階では主人の子供たちがチャンバラの遊びで暴れ回っていたので、天井から細かい埃が降ってきて主人の目に入ったところでした。主人は目にごみが入って、目が痛くてしょうがありません。そのせいで番頭の言葉を聴き逃してしまい、おまけに目の痛みで自然と目をマタタイてしまいました。) 番頭「なんですって。本当にそんな値でいいのですか。」 (番頭は主人が「十文で善い。」といっているので心配になり、「本当にそんな値段で売って善いのですか?」と問い直そうと主人の方を見ると、相変わらず目をマタタカせて「十文で善い、十文で善い・・」と繰り返していました。) 番頭「わかりました。旦那さんがそう言うなら・・・・・お客さん、これ十文で結構です。なんか知りませんけど、よっぽどお客さんのこと気に入ったみたいです。涙まで流して喜んでいますもの。」 お客「ほんまにか。これは掘り出しもんや。ほな、ここに十文置くで。包まんでもええわ。気の変わらんうちに貰うときます。ええもん買うたわ。ほな、さいなら。」 番頭(主人のところへやって来て、)「旦那さんの言うとおり、あの茶碗十文で売りましたけど、何でそんなに安く売る気になったのですか。」 主人(思わず、口を利いてしまう。)「なんと言った、番頭。わしが十文で売って善いと言ったと!?」 番頭「なんべんも目でおっしゃいましたでしょう。」 主人「バカを言うな。目にごみが入って痛くてマタタイていただけじゃ。番頭、あの茶碗は五両の元手が掛かっていることは、おまえが一番良く知っていることじゃないか。このわしがそんな大損するような値を付けるわけがない。何年わしのところで働いているんだ。このバカモノ!」 番頭「そう言われても、旦那さんが涙まで流して喜んでいるので間違いないと思いました。」 主人「このドアホ、ボケ、カス、スカタン」(なぜかしらいきなり関西弁) 主人「損した分は、番頭、あんたが弁償しなさい。それにわしにこんなに喋らせおって、不経済なことさせた罰としてきょうのおまえの夕食は抜きにする。分かったな。」 番頭「よく分かりました。今日まで辛抱してきましたがもう限界です。今日限りでお暇を頂戴します。」 主人「何を言うんだ!・・・・わしも言い過ぎた。おまえに辞められたら困る。思いとどまってくれ。」 番頭「いいえ、だめです。旦那さんのモールス信号には、もうシンゴウできません。」
「なにをむつかしい顔してんねん。」 「“著作権を主張する方は投稿しないでください”ってあるから、投稿しようか迷ってるんや。」 「迷うような噺か聴いたるわ。いっぺん、聞かしてみい。」 「教えられへん。」 「ケチとちがうか。」 「ケチと違うわい。」 「なんで教えられへんねん。」 「そやかて、噺が思い浮かばんもん。」
「初詣に行かないか?」 「イヤダよ、お賽銭、もったいないもん!」 「ケチだねぇー、オイ、そんなにケチだと、罰が当たるぜ!」 「お前は行くのか?」 「ウン、ちょっくら行って、こぼれたお賽銭、拾ってくらァ……」
「おとうちゃん、やっと前まで来たで。天神さんにおねがいごとすんねん、おさいせんのお金出して」 「お賽銭の金ぐらい自分で持ってこんかい。ほら、手ぇ出せ、かしこうなるよう、ようお願いせえよ」 「なんや1円玉ひとつだけか、ねがいごと他に3つあんねんで、ぜんぜん足りひん」 「いま、こまかいのこれしかないわい、ねがいごとの方へらさんかい」 「ほな、阪神優勝は来年にしとくわ」 「そうしとけそうしとけ、むこうの阪神帽かぶったおっさんがどうせしとる」 「背が高くなるんも来年でええわ」 「そぅしとけそぅしとけ、隣のはなたらしたチビがどうせしとる」 「おとうちゃんの仕事みつかんのも来年でええわ」 「......、おまえはかしこならんでええ」
「会社の鈴木君の奥さん、浮気してたんだそうだ。おまけに子供も浮気相手の子だったらしい。」 「へえ、あの奥さん顔に似合わず大胆ね。」 「鈴木君は、子供が成長しても、自分にも奥さんにもちっとも似てこないのでおかしいと思っていたらしいんだ。ある日帰ったら、書き置きを置いて子供を連れていなくなっていたそうだ。」 「へえ、それはショックね。」 「ああ、実は奥さんの方に結婚前から付き合っていた人がいたらしんだ。事情があって親の反対で結婚できなかったけれど、結婚後も付き合っていたんだ。それも知能犯なんだ。自分の血液型がB型なので浮気してもバレナイように、どんな血液型の子供が生まれても大丈夫なA型の鈴木君を選んだんだな。」 「すごいわね。」 「そこへ行くとうちは大丈夫たな。俺もおまえもO型だもの。」 「もちろんよ。」と妻は言いながら内心次のように思っていた。『鈴木さんの奥さんもバカだわ。何も出て行くことなかったのに。私は居座るんだから。だって、彼氏とわざわざ同じ血液型の人を見つけたんだもの。』 --おい、お題の「ケチ」とは違うじゃないか。 --いいえ、ケチエン(血縁)の噺です。
吝嗇家のしわい屋けち兵衛さんでしたが、とうとう年で亡くなり、閻魔大王の前に引き出されてしまいました。 「けち兵衛、お前は生前、たいそうケチであったな。とても、そのまま、極楽へ通すわけには、いかん。地獄で、七百年の間、裁きを受けた後、成仏させてやろう」 「大王様、お恐れながら、お願いがございます」けて兵衛は答えました。 「願いだと? それは何だ?」 「私は、地上に残してきた金の事が気になって、気になって、死んでも死んだ器がいたしません。どうぞ、幽霊でも良いから、私を地上に戻し、残した金を使わせてください」 「なに、幽霊にせよとな? 珍しい奴、そこまで金のことが気にかかるか。しかし、幽霊になっても無駄なこと、金なぞ使えぬぞ!」 「それはまた、なんだ?」 「当たり前の事じゃ。幽霊にお足は残らぬわ!」
「オイ、一緒に呑みに行こうぜ」 「ヤだよ、おまぃと呑みに行くと、いつも奢らせられるから」 「ケチだねー! もう、お前みたいなケチンボとは二度と呑みに行きたくねえや! 良いよ、一人で呑んでくるから…… 一人で呑んでくるから、酒代出しな!」
「今度のお題はケチだってね。」 「ああ、いい小噺を思いついたぜ。」 「じゃあ、投稿しねぇな。」 「もったいなくてできねぇよ。」 |
熊五郎がかかあとせがれの三人で向こう岸に渡るため、渡し場までやってきた。 熊「与太郎じゃないか。船頭さんになったのか。」 与「ああ、なった。」 熊「いつからやってるんだ。」 与「今から。」 熊「おいおい大丈夫かよ。」 与「船頭のことなら任してくれ。」 熊「おっ、その威勢気に入った。三人を向こう岸まで渡して貰おうじゃないか。渡し賃はいくらになる。」 与「それ、あたいに聞いてるのかい。そんな落語のセオリーに外れること聞いたらだめだよ。『大人十銭、子供五銭だからしめて二十五銭です。』なんて言ったら、あたいらしくないだろう。聞かないでおくれよ。聞かれたら答えたくなるだろう。あたいも辛いんだよ。」 熊「そうかい。じゃ、聞かなかったことにするよ。でも渡し賃はどうする。」 与「気持ちでいいよ。」 熊「いくらだい。」 与「三十銭でいいよ。」 熊「なんだ、ちゃっかりしてやがるな。はい、三十銭。」 与「まいどありぃ。」 熊五郎家族を乗せて、与太郎はもやい綱を解いて舟に放り込んだが、自分は舟に乗らず見送った。 熊「おい、おまえが乗らないでどうするんだ。だれが櫓を漕ぐんだよ。」 与「熊さんやりなよ。あたいはなんにもセンドウだから。」
「おじさん、おはよう。」 「おはよう!与太郎、なんで歯をむき出してるんだ。」 「今は、金馬師匠の与太郎してんだ。」 「はあ・・・」 「これは、誰だ。」 「田楽を持ってなんだってんだ。」 「桂田楽!」 「バカ、それを云うなら桂文楽だろう。」 「じゃ、これは!」 「一升瓶ぶら下げて、それがどうした。」 「古今亭いっしょう。」 「古今亭志ん生って言いたいのか。だめだこりゃ」 「じゃこれで最後。」 「週刊誌持ってきたな。こいつは分かったぞ。古今亭志ん朝(新潮)だな。」 「当たった。すごい、おじさんは天才だ。」 「誰だって分かるよ。ところで、まだまだ与太郎を演じてくれてる師匠はいっぱい居るのに最後か。」 「ああ、四人だけで十分だ。おいら与(四)太郎だもの。」
「与太郎、おはよう。」 「・・・・・・・・」 「おい、おはようっていってるだろ。」 「・・・・・・・・」 「どうしたんだ、与太郎らしくないね。」 「沈黙は金って、言うだろ。」 「それは、お喋りは良くないってことだ。」 「そうか、わかった。それで、女の人はお喋りなんだ。」 「どうしてだ。」 「女には、金がねえもの。」
「おじさん、おはよう。」 「おはよう、与太郎は偉いね。ちゃんと挨拶するもの、偉い。ところでいくつになった?」 「にじゅうになった。」 「にじゅうとは言わないな。はたちって言うんだぞ。」 「知ってるよ。」 「じゃあ、どうしてはたちって言わないんだ。」 「おいらがはたちだって言ったら、おじさんが突っ込めえだろう。」 |