立川談修さん DANSYU TATEKAWA /落語家
今回ご登場願ったのは、古典落語界の新星、立川談修さんでございます。落語家さん って、普段どんなことを考えたり、どんな活動をされてるのかって興味ありますよね。ぶしつけな質問にもきちんと答えてくださいましたよ。 まずはインタビューを読んで、そして談修さんの落語を聴きにいってみませんか? 
Interview

○そもそも、落語家になろうと思ったのはどうしてでしょう?
 一言で答えると「何よりも落語が好きだったから」でしょうね。
 僕はもともと子どもの頃からお笑いが大好きだったんですよ。物心ついた頃から、ドリフターズやチャップリンが憧れの存在でした。落語を聴きはじめたのは、小学生4年生か5年生の頃でしたけど、すぐにのめり込みましたね。面白くてしかたなかったです。ラジオやテレビでやる落語番組はとにかく全部カセットテープに録音して、繰り返し聴いてましたよ。  もちろん話のあう友達はいませんでした(笑)。まわりの友達が「将来は野球選手になりたい」というのと同じ感覚で「将来は落語家になりたい」と思ってた。小学生の頃の(職業の)夢が現実になるって、多分めずらしいことなんでしょうね。
 で、高校、大学と落語研究会に所属するわけなんですが、その歳くらいになるとさすがに現実的になって、「落語は確かに好きだけど、それを一生の仕事にするってのもなあ」って考えるようになったんですね。かといって格別なりたいものがあるわけじゃないし、就職関係の案内が家にドカドカ送られてくるようになった頃、自分が企業に就職する姿をシュミレーションしてみて、「俺、このままサラリーマンになったら、多分一生後悔するなあ」って思ったんですよ。「どうせやり直しのきかない、いっぺんしかない自分だけの人生なんだから、一番やりたいことをやらなきゃあ損だろう」って。  ……なんかいま、ものすごくカッコいいこと語りはじめてません? 普段はこんなこと、酔っぱらわなきゃいわないんですけどね(笑)。


 ○落語の中でも古典落語に興味をもたれたのはどうしてですか?
 それはもちろん、古典落語がなによりも素晴らしいものだったからです。面白いですよー、落語って。落語は間違ったことをいいません。落語家はちょいちょい間違ったことをいいますが(笑)。
 ウチの師匠談志曰く、「古典落語のなかには、人間の生活のありとあらゆるパターンやフレーズが凝縮されている」と。まったくそのとおりだと思います。


 ○はっきりいって、師匠はコワイですか?
  よくきかれることなんですけどね、難しいですねー。ま、怖いですよ。そりゃ怖いですけどね。「ヤクザが怖い」とか「幽霊が怖い」という怖さとは違いますよね。僕には誰よりも尊敬している人が3人いて、手塚治虫とチャップリンと立川談志なんですけど、(手塚治虫とチャップリンの)2人は死んでて、たったひとり残ってる人なんですから。なにしろ僕の師匠なんですから。この人が「クビだ」とか「名前返せ」といったら、「落語家立川談修」という存在はなくなってしまうわけですから。怖くないわけがないですよ。でも、もし師匠が死んだら、人目もはばからずに泣くでしょうね。

○落語家として「これは誰にも負けない!」というところはどこですか?
 ウーン、なんでしょうね。落語ではもちろんまだまだですし、落語以外に余芸もないですしね。一門の兄弟子みたいに漫画が書けたりバイオリンが弾けたりするわけじゃありませんし。
 しいて挙げるとすれば、持ってる落語のテープの数ですかね。2000本近くあります。ちょっとしたモンでしょう?


○逆に「まだまだ勉強不足だな」と感じることはありますか? もしあるとすると、どんなところですか?
 それはもう山ほどありますよ。もっともっと上手くなりたいですし、もっともっと面白くなりたいです。勉強不足も甚だしいです。この3月で落語家になってもう丸5年になるんですが、「ちょっと怠けてるな」と反省してますよ。もっとハイペースでいろんなことを勉強していかなきゃいけないですね。

○落語人気も復活しつつありますね。実際に肌で感じられますか?
 どうなんでしょう、落語人気……。復活してるんでしょうかねえ? 確かに去年は雑誌で落語特集が組まれる数は多かったですね。でも……。テレビ・ラジオの落語番組は減りつづけてますからねえ。僕が落語を聴きはじめた頃は、いまの5倍くらいあったんですよ。僕にとっての「入り口」がそこだっただけに、寂しいですわ。

○普段も「落語一筋!」の生活なんですか? 趣味とかはお持ちですか?
 これはねー、イカンとは思ってるんですが、とりたてて趣味と呼べるようなものはないですねー。なにしろ落語が第一の趣味だったもので。スポーツはもともと見るものやるのも全然興味がないですし。趣味と呼べるかどうかわかりませんが、本とかギターとかビデオ鑑賞とか、好きなものは全部室内系ですね。筋金入りのインドア派です。

○談修さんの勉強会には、若い女性もたくさんいらっしゃいましたね。モテますね???
 いやー、そんなことないっすよ。謙遜じゃなく。もっとモテたいんですけどね。実際、哀しいくらいモテないですよ。もう泣きそうですわ(笑)。
 勉強会に来てくれてる若い女の子たちは、僕のファンじゃなく、高校時代の同級生とかなんですよ。こっちから「頼むよ、来てよー」とかいってやっときてもらってるんですから。「えー、面白いのお?」とかいわれたりして(笑)。


○まだ実際に落語をナマでみたことがない、という人々に、落語の魅力を存分に語ってください!
 これもねー、難しいとこなんですよ。落語は確かに素晴らしいものですし、もちろんもっと多くの人に落語の魅力を理解してほしいんですが……。落語の面白さってね、わからない人には一生わからないものだと思うんですよ。よく「大衆芸能」っていい方をしますよね。ま、確かにそういう側面もありますけどね、落語の持ってる面白さって、元来すごくマニアックなもので、基本的に一部の人間にしか楽しめないようにできてるんじゃないかって思います。
 だから、むやみに「とにかく来て! 見て見て!」とはいえないんですよ。「見たけどやっぱり面白くなかった」っていわれちゃったら、こっちが落語に惚れてるぶん、すごく哀しいでしょう? だけどもちろん世の中のさっきいった「一部の人間」のなかで、まだ落語に触れてない、その面白さを知らない人は大勢いるはずですから、そういう人を探したいですね。一人でも多くのそういう人に「知らなかった、落語ってこんなに面白いんだあ!」っていわせたいっす。
 「なっ? 面白いだろ?」っていいたいですよね。なにも僕の落語を好きになってくれなくてもいいわけです。落語自体のファンになってほしいですね。


○これからの談修さんの御予定をお聞かせください。
 一昨年から始めたんですが、上野広小路亭で、隔月の勉強会をやってるんです。独演会方式で、毎回3席演ります。とりあえずはこれに来てほしいですね。今度は2月26日(土)です。「ニイニイロク」と覚えてくださいね。木戸銭は1000円で、PM6:00開場、6:30開演。上野広小路亭は広小路交差点の角、上野松坂屋の向かいにあるビルです(台東区中野1-20-10)。少しでも興味をもったら迷わずに来てください!

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